クレ満くん
2024.09.13
これは20年ぐらい前の話になるが、
クレ満とは、パチスロのクレジットを(不正に)満タンにする器具のこと。クレ満くん、と呼んだりしていた。
たしか誰かが最初に「クレマン、クレマン」と言い出して、なんじゃそりゃと聞いたら、そういった器具を使った不正が横行しているという。(当時)
ついては、「不正を検知して警報を出す装置ができないか」という話。
うーん、その不正器具ってのはどういうもので実際の動きは? 最初それがわからないので何ともできなかった。
すると誰かが入手してきて、会社にあったパチスロ機で実際にやってみるとビックリ。ボタンを押すとクレジットがピッと瞬間的に50まで上がる。
メダルを入れなくてもクレジットが上がる。
ゴト師はその先端をメダル投入口から差し込み、根本の電池部分を巧妙に手で隠しながらプレイしていた。
ブツは手作りのもので、どこかで組織的に作られていたものかは不明だが、1個だけなので壊すと困る。これから警報機を作ろうとしていたので、実験用に(他のパチスロ機種に合うものも)いくつか必要になった。
パチスロのメダル投入の原理は、2つの通過センサでメダルの通過をみている。
もちろん不正なメダル(大きさや重さが異なるもの)は、投入された最初の段階でメカ的に排除され返却される。
2つのセンサがA、Bとして、ONになる順番がA,Bだと正しい方向に流れているとして受け付けられる。
もしB,Aとなったら、メダルが逆方向に移動している、たとえば糸吊りと考えられるのでエラーが出る。こういった仕組みは、その当時においても従来から組み込まれていた。
クレ満は、通過センサの発光側をJ字の先端に2個並べて、パルスで発光させるようにしたもの。もちろんA,Bの順に消灯、点灯を繰り返すようになっていた。
これを実験用に真似して作れと。
通過センサを壊して発光側を取り出し、ヤスリでギリギリまで薄く削るのが大変だった。それからPICマイコンをつないだ。以前にコインレスを作っていたし、この部分は簡単だ。
ひとつはうまくいって、今度は別の機種用を作れと言われた。機種によって構造や寸法が異なっていた。機種ごとでいくつも作るのは非常に大変だった。
そんな中、誰かが思いついて、なんと工作用の厚紙だけで(電子回路なしで)クレジットを上げる仕組みを作ってしまった。ちょっと職人的な使い方が必要ではあったが、コロンブスの卵というやつだった。
こうして実験用の器具が揃ったところで、各社の中古台を揃えて実験を始めた。
不正な信号を検知して警報を上げる装置を作り始めたが、課題もあった。
パチスロ機と電気的に接続することは許されていない。そして警察に届け出が必要となる(構造変更の手続き)。後者はなんとかなったが、それ以前の原理的なところでずいぶん悩んだ。INとOUTを監視するのだったか、ホッパーにセンサを付けたか、もう忘れたな。
いくつかの案を出してなんとかうまくできた。細かいことは忘れた。
当時のパチスロ機では、メダルの信号は実際にありえないぐらい早くても受け付けてしまっていた。これはそれ以前にコインレスを作った時に気づいた事で、試しにパルスを速くしてみたらボタンを押した一瞬で50まで上がった。
これは本当なら現実のコインの動きに沿って、ある程度の幅をもたせた範囲内での速度の判定をすべきだが、(ありえない速度で来たらエラーにすべき)
そもそもパチスロのプログラムやデータに使えるROM容量が限られており、だいたいいつもギリギリいっぱいまで使っており、その部分まで考慮できなかった。
あれこれやっているうちに、ゴト師が次の秘密兵器を出してきた。なんとメダルサイズで、投入口から入れると通過センサ部分でひっかかり、クレジットを上げる。
もし戻したくなったら返却レバーを押すだけという仕組み。
そこでまた、改良版の案が出てきて実際に作ってみたら、シンプルだけどうまくいった。
今度は電子回路を使わない。エンジニアとしては物足りなかったが、アイデアには非常に感心した。なるほどうまいこと考えるなあ、と。
その器具を取り付けられた個体に異物が差し込まれたら、パチスロ自身のエラー判定で警報を出すのである。
こんな事もやっていました、という話。
クレ満とは、パチスロのクレジットを(不正に)満タンにする器具のこと。クレ満くん、と呼んだりしていた。
たしか誰かが最初に「クレマン、クレマン」と言い出して、なんじゃそりゃと聞いたら、そういった器具を使った不正が横行しているという。(当時)
ついては、「不正を検知して警報を出す装置ができないか」という話。
うーん、その不正器具ってのはどういうもので実際の動きは? 最初それがわからないので何ともできなかった。
すると誰かが入手してきて、会社にあったパチスロ機で実際にやってみるとビックリ。ボタンを押すとクレジットがピッと瞬間的に50まで上がる。
メダルを入れなくてもクレジットが上がる。
ゴト師はその先端をメダル投入口から差し込み、根本の電池部分を巧妙に手で隠しながらプレイしていた。
ブツは手作りのもので、どこかで組織的に作られていたものかは不明だが、1個だけなので壊すと困る。これから警報機を作ろうとしていたので、実験用に(他のパチスロ機種に合うものも)いくつか必要になった。
パチスロのメダル投入の原理は、2つの通過センサでメダルの通過をみている。
もちろん不正なメダル(大きさや重さが異なるもの)は、投入された最初の段階でメカ的に排除され返却される。
2つのセンサがA、Bとして、ONになる順番がA,Bだと正しい方向に流れているとして受け付けられる。
もしB,Aとなったら、メダルが逆方向に移動している、たとえば糸吊りと考えられるのでエラーが出る。こういった仕組みは、その当時においても従来から組み込まれていた。
クレ満は、通過センサの発光側をJ字の先端に2個並べて、パルスで発光させるようにしたもの。もちろんA,Bの順に消灯、点灯を繰り返すようになっていた。
これを実験用に真似して作れと。
通過センサを壊して発光側を取り出し、ヤスリでギリギリまで薄く削るのが大変だった。それからPICマイコンをつないだ。以前にコインレスを作っていたし、この部分は簡単だ。
ひとつはうまくいって、今度は別の機種用を作れと言われた。機種によって構造や寸法が異なっていた。機種ごとでいくつも作るのは非常に大変だった。
そんな中、誰かが思いついて、なんと工作用の厚紙だけで(電子回路なしで)クレジットを上げる仕組みを作ってしまった。ちょっと職人的な使い方が必要ではあったが、コロンブスの卵というやつだった。
こうして実験用の器具が揃ったところで、各社の中古台を揃えて実験を始めた。
不正な信号を検知して警報を上げる装置を作り始めたが、課題もあった。
パチスロ機と電気的に接続することは許されていない。そして警察に届け出が必要となる(構造変更の手続き)。後者はなんとかなったが、それ以前の原理的なところでずいぶん悩んだ。INとOUTを監視するのだったか、ホッパーにセンサを付けたか、もう忘れたな。
いくつかの案を出してなんとかうまくできた。細かいことは忘れた。
当時のパチスロ機では、メダルの信号は実際にありえないぐらい早くても受け付けてしまっていた。これはそれ以前にコインレスを作った時に気づいた事で、試しにパルスを速くしてみたらボタンを押した一瞬で50まで上がった。
これは本当なら現実のコインの動きに沿って、ある程度の幅をもたせた範囲内での速度の判定をすべきだが、(ありえない速度で来たらエラーにすべき)
そもそもパチスロのプログラムやデータに使えるROM容量が限られており、だいたいいつもギリギリいっぱいまで使っており、その部分まで考慮できなかった。
あれこれやっているうちに、ゴト師が次の秘密兵器を出してきた。なんとメダルサイズで、投入口から入れると通過センサ部分でひっかかり、クレジットを上げる。
もし戻したくなったら返却レバーを押すだけという仕組み。
そこでまた、改良版の案が出てきて実際に作ってみたら、シンプルだけどうまくいった。
今度は電子回路を使わない。エンジニアとしては物足りなかったが、アイデアには非常に感心した。なるほどうまいこと考えるなあ、と。
その器具を取り付けられた個体に異物が差し込まれたら、パチスロ自身のエラー判定で警報を出すのである。
こんな事もやっていました、という話。
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コメント一覧
kanitama - 2024年09月13日 20:47
業界内でもいろいろあるのですね。テクノロジーがローテクで破られるというのはなんとも愉快なのかもしれません。それをまたアイディアで解決するという醍醐味も面白いです。なんだか終わりのない戦いのようですね。
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