レーザー加工機の現実
2024.02.04
CNCを長年使ってきた自分にとっては、レーザー加工機は夢のようなものでした。

存在自体はかなり昔から知っていました。展示会で見て一目惚れです。買って帰りたい気分でした。まあ、値段は300万もしましたが・・・その当時(2000年代初め)

値段が下がってきたのは近年のことです。

とにかく加工の速さと仕上がりのきれいさには惚れ惚れします。

しかし、意外と手間やランニングコストのかかる物なのです。製品としては、まだ発展途上のように感じます。

身近な物、たとえばプリンタで定期的な調整と清掃が必要だったらどんなに不便でしょう。しかも工具を出してきて試行錯誤が要求されるとしたらどうでしょう。なんて面倒くさいんだと思うでしょう。

インクジェットプリンタにはヘッド調整などありますけど、それでも最初の1回か、ヘッドを交換した時ぐらいです。あとはインクが詰まった時にクリーニングするぐらい。簡単に操作できます。
大昔は複写機もドラム交換とか内部清掃とか、トナー補充といったメンテが必要でしたが、これをカセット式にした家庭用複写機が普及して、大幅に手間が削減されました。

レーザー加工機の場合、
加工物を焼いて切断しているので、煙が出てきます。特に木材だとヤニが出てきます。それでレンズや反射鏡が汚れます。
溶剤は反射鏡やレンズの表面処理が落ちるので、普通に綿棒だけを使って軽くこすります。強烈なレーザーを受けているせいか、いずれ劣化しますので交換が必要になってきます。

脱臭機は8万円ぐらいしたと思います。中身は単なるファンとフィルターだけです。
エアフィルターが汚れれば要交換です。これもまた意外と高い。何か身近なもので代用できれば良いんですがないでしょう。活性炭は家庭菜園に使うような物が大袋で売られていて比較的安そうです。HEPAフィルターなんかはさすがにありません。
悪臭で近所迷惑にならなければ、窓から直接排気すればエアフィルターは不要です。

レーザー管は寿命があり、一般に3,000時間と言われています。
実際は結構微妙で、通電時間を測定してトータル80時間しか使っていないのにもう切れなくなった、という人がいました。
ワット数など色々ありますが4~5万円もします。(うちは1本だけ予備を買ってあります)

一説によると、実際の通電時間ではなく、使い始めた時点からの3,000時間という事のようです。
うちなんかは月に1~2回、いくつか切ってみて1回あたり1時間にも満たない使用頻度ですが、そんなの関係なしに、使い始めから3,000時間だったらとっくに過ぎています。実際に使っている人の経験からは、2~3年ごとに交換しているような印象です。

これを交換するのが厄介で、水冷管も通っていますから、まずは水をこぼさないようにして慎重に作業します。
新しいものを取り付けると、微妙に位置がずれます。そこで光軸調整などが必要になってきます。面倒くさがって作業を省略すると、結果に出てきます。切れないなあと。

光軸ズレや光路の調整・・・
レーザーを最終的には細く絞って加工物を焼きますから、たとえばフォーカスがずれてぼやけてしまうとうまく切れません。

子供の頃、虫眼鏡で太陽光を集めて紙を焼いて遊んだ事がありませんか。これを思い出してみると良いです。光が最も絞られた状態が一番よく焼けました。そうなるようにレンズを動かして調整しました。

加工テーブル上、右端でも左端でも、左上でも右下でも真ん中でも同じようにならなければなりません。
反射鏡にテープを貼って、レーザーを一発打ってみて、ど真ん中に穴があくかどうか。きれいな点に抜けること。

ずれていたら、反射鏡の固定ネジをちょっと調整してもう一度レーザーを打ってみて、穴の開き方を見ます。
加工ヘッドを左上から右下までいちいち移動して、それぞれ確認します。これが職人技的な感じもしてきます。
何度も繰り返していると、しんどくなってきます。
光路の途中に反射鏡は3つありますから、それぞれ順番に調整が必要です。

オートフォーカスのヘッドに交換した時、そのままではビームがずれてしまって切れなくなりました。
それで実際に調整したんですが、なかなかうまくいかずに、くじけそうになりました。ここで終わったら投資が無駄だろうと自分に言い聞かせつつ・・・

オートフォーカスってのは大したものじゃなくて、加工物の表面に軽く当たったところで原点を決めるものです。
ボタンを押すと、ヘッド先端が降りてきて加工物に当たります。そして上がっていきます。
加工物との距離を最適にしようという仕掛けです。そうしないとビームが絞れませんから。

冷却水は、説明書によると2~3ヶ月に一度交換して下さいと書いてあります。
じつは全く交換したことはありません。2~3ヶ月に一度なんてそんな面倒くさい、と思います。
水道水ではだめです。よく蛇口の周辺が白っぽく汚れてるのを見ますが、ミネラル分です。これが詰まったりすると厄介なので精製水が必要です。
機械の内部に水をこぼさないように作業するのが非常に大変です。
たぶん初めての時に絶対こぼすでしょう。
水を足しながら、ポンプを回して循環すると気泡が抜けてリザーバーの水位が下がってきますので、適量に調整します。このあたりは車のラジエーターの冷却水の作業と似ています。

あとは・・・加工物を切り抜いた時に、その切りかすが下に落ちますので清掃が必要です。たとえば穴を切り抜いたらその芯の部分が落ちますけど、忘れず拾っておかないと、あとでそれにレーザーが当たった時に融けてこびりついたり、燃える可能性があります。

火災の注意。アクリルにレーザーが当たって焼かれると可燃性ガスが出ます。火がついて燃えだす事があります。冷却用のエアが吹き付けられているので酸素供給と同じこと。燃え広がる可能性があります。
従って、加工中は機械のそばを離れないようにして、もし燃えたらすぐ対処できるようにします。

まあ、結論を言うと、機械の保守やランニングコストが気になるなら所有しないほうが良いでしょう。これは3Dプリンタにも言えます。

加工サービスは各社ありますので、そこにデータを送って依頼すればその料金だけで済みます。機械のメンテを自分でやらなくて良いです。騒音の心配もありません。何個作っても機械の番をする必要もありません。

機械を手元に所有する利点は、使いたい時にすぐ使えることです。急ぎですぐ加工したいかどうかです。試作を色々やってみる人もいるでしょう。こういう場合に向いています。
機械を所有する喜びはありますが、同時に色々な面倒を抱え込みます。

機械を所有していても、試作は手元でやって、量産は加工サービスに外注でも良いでしょう。
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amesho - 2024年02月04日 11:10
3Dプリンタは、また買って以来、なかなかいじる時間が取れません。新しいCADを勉強しようとテキストを準備しておいたら、それっきりそのままです。

CNCはレーザーにはできない加工ができます。たとえば、ある一定の深さに溝を彫る加工です。レーザーだと表面を焼くか、切り抜くしかできません。ある一定の深さで止めて、しかも平面を平らに仕上げるのは無理です。

ただ、CNCは遅いのと騒音が大きいのと、切屑の片付けが大変という欠点があります。

それぞれ得意不得意があります。持ち味を活かすというか、選択の幅が広いのは良いことです。
kanitama - 2024年02月04日 11:03
なにかと課題を提供してくれるレーザー加工機ですね。ある程度試して外注したほうがよいと判断した時点でCNCに戻るということもありそうです。そういえば3Dプリンターブームはもう過ぎ去ってしまったのでしょうか。
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