ハンダ槽
2026.02.09
量産品の(挿入部品の)ハンダ付けを自動的に行うには、ディップハンダとフローハンダというやり方があります。
はるか昔、バブル崩壊後ぐらいでした。新人の頃に数カ月、工場で研修(兼お手伝い)をしておりまして、毎日間近で見ていました。

おば・・・たち、じゃなかった失礼、年上のお姉さんたちが基板に部品を差し込みます。その部品の差し込まれた基板を持ってきて、班長がその装置にセットします。

基板の端に爪がかかるようになっています。
だから、その部分に部品が干渉するような基板だと、その部品を後付するような対応が必要になります。できるだけ捨て板をつけておいて干渉を避け、あとで折れば良いです。こういう経験は設計に活かします。

熱に弱い部品も後付となります。たとえば樹脂製のイヤホンジャックなんか変形しますから、あとの工程でハンダゴテで付けます。

基板はコンベアで左側へ流れていき、
最初にプリヒーターだったか、フラクサーだったか忘れましたが、どっちかです。
いきなり高い熱をかけるとダメージになるんでしょう。ヒーターで予熱をかけます。
それからフラックスの泡立っているところを通り、フラックスが塗布されます。

ここは危ない所で、有機溶剤が加熱されていますから火災の原因にもなります。有機溶剤で中毒になる可能性もあります。もちろん、換気装置は付いていました。

いよいよハンダ槽です。これはディップハンダの場合です。
キラキラしたハンダ(当時は有鉛)のタンクの上に基板が来ました。

そのままにしていると表面が酸化して汚れてきますから、常にきれいなハンダが表面になるような仕掛けが付いています。

基板を片側から傾けるようにして、基板のハンダ面が融けたハンダの上に載ります。
そうして水平になり、数秒間そのまま保持します。
フラックスの煙がモクモク上がります。
基板は灼熱地獄まっただ中です。

よく見ると、スルーホールにハンダが上がってきているのが見えます。
部品面にハンダがあふれたりしないのか。液面調整されていますから大丈夫です。

ハンダゴテで付ける時に部品を加熱しすぎて壊すんじゃないかと心配する方もいるでしょうが、とてもそんなレベルではありません。
なにしろ地獄の釜のようなものです。グラグラ煮立ってはいませんが、融けたハンダですから地獄の熱さです。ハンダ地獄です。

そうして片側から引き上げられて、これはハンダの切れをよくするためでしょう。やっと地獄から抜け出しました。

さらに左側へ移動し、ファンで冷やされます。

そうして、装置の底面の見えないところを通り、基板は班長のところへ戻ってきます。
班長はそれを取り出し、ほいっ、とこちらへ渡します。

私はその基板をアチチとか言いながら、素手でマスキングテープを剥がしていきます。
素手じゃないとテープの端がめくれません。手はフラックスでベトベトになりました。

当時はフロン規制前でしたから、仕事が終わった所でフロンを手にドボドボかけながら洗いました。とんでもない時代でした。

ついでにメガネとか腕時計の金属バンドも洗いました。昼休みにコソーリと。今さらながらゴメンナサイ。

夏のディップ室は冷房が入っていても、熱源がありますから暑くてたまりません。スポットクーラーを置いていました。合間にスポットクーラーに顔を向けたりしていました。

そのあと基板を洗浄機にかけて、3つの槽があったと思うんですが、当時はフロンで洗っていました。1番目の槽はフラックス汚れで濁っていました。
2番目は「すすぎ」で、3番目は「温風乾燥」でした。

基板はカゴに入った状態で自動的に上下されます。じつは、この洗浄機のプログラム改造の話があり、たまたまそのシーケンサの経験が私は有ったので、班長(元Z80プログラマ)に教えたのでした。(部署が違うので直接手が出せない)

長いリードをニッパーで切る。ニッパーといっても普通の手持ち工具ではありません。エアの力で、軽く握るだけでプシッ、プシッと切ってくれます。うっかり指でも挟んだら大変です。

円板カッターでいっぺんに切る装置もありましたが、あまり使ってない様子でした。

あのハンダ槽の中に基板が落ちて沈まないのかって、心配でした。当時は。

実際そこで(たまに)引っかかり、あわてて班長が分厚い手袋を付けて取り出していました。
基板もダメージを受けたと思います。

のちに手動ハンダ槽を自分で使う機会があり、小さな基板をハンダ付けしたことがあります。
落ちないんです。ハンダの上に乗るんですね。基板を離してもそのまま浮いている。
ハンダの中に押し込もうとしても跳ね返されました。

ハンダの比重が相当重いからでしょうか。あるいは表面張力か。
私は泳げませんが、こんなふうに水に軽々と浮いたら素晴らしいのになと思いました。
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