トランジスタ互換表のナゾ
2025.02.10
小学生の頃は限られた情報源の中で生きていた。電子工作に関する情報源は主に本とか雑誌とか、たまにテレビとか。その少ない情報源を貪るように読み込んでいた。

部品屋は近くに無くて、どうしても必要な物は通販に頼るしかなかったが、それもめったに利用できなかった。(主に金銭的な理由で)

それでテレビ等を拾ってきて部品を集めていた。トランジスタ、抵抗、コンデンサ、ダイオード等・・・基板の裏側からはんだごてで加熱しながら部品をひとつずつ抜いていった。

だけど、そのトランジスタを使って何か作ろうにも、記事に載っている型番の物はなかなか無かった。
全く同じ型番じゃないとダメなのだと当時思い込んでいた。
それにまだ慣れない頃だったから、もし動かなかったら、その原因は記事の通りにしなかったからかもしれないって思ったでしょう。

今だったら、ここのトランジスタは型番通りではなく汎用的なものが使えるとか判断ができるけれど、当時は拾ってきた基板のトランジスタなんか正体不明だった。少なくとも型番は記事と合致しなかったりして、使えないのかなとがっかりしていた。

そんな中、記事を読んでいると「トランジスタ互換表」なるものが世の中に存在する事を知った。なんだそりゃ? それが有れば、ジャンク基板のトランジスタでも使えるかどうか調べられるな!

しかしそれがどんな物か見たこともなく、脳内の想像では、ポスターみたいな1枚の紙に表が載っているものじゃないかと・・・そんな紙をパーツ屋で無料配布しているんだろうと勝手に思い込んでいた。

実際は本になっている。さすがに今は新しいのは出ていないけれど。そんなものは田舎の本屋に影も形もなかったから知る由もない。

当時は何にも知らないし、調べる手段もないから、めったにない通販利用の機会に質問を書き添えた。「トランジスタ互換表があったら頂けませんか」

そうすると部品が送られてきた時に丁寧に返事が書かれていて、そこでようやくトランジスタ互換表がどういう物なのかを知ることができたというわけ。(互換表は頂けなかった)

ずいぶん遠回りをしたが・・・

色々考えて先に進めなくなるよりも、とりあえず試してみたらどうなのかって姿勢は、あとから芽生えてきたような気がする。(勢いでドンドン進む気持ちが大事)

たとえば2SC815というトランジスタがあった。1815じゃないよ。岩通の留守番電話のジャンクに入っていた。
これはラジオ作りに使えるのだろうか?と、記事では1815だけど、型番が似ているから案外いけるんじゃないか、といういい加減な発想。
でも差し替えてみると案外いけるなあと感じた。

電子工作記事では2SC372、2SC1815、2SC945等を良く見かけたと思う。

一方、テレビから取り外した物は2SC828(松下)とか、2SC458(日立)などが有った。458なんかは形が変わっていて、どっちからエミッタ・コレクタ・ベースなのだろうと最初悩んだ。

テスターにhFE測定がついていたから、ピンがわからなくても適当に突っ込んでみて、針がふれたらそれが正しいピン並びだと判断していた。確認しようにも資料がないから。

三洋のトランジスタなんかは形が変わっていて面白かった。電解コンデンサの表記も、三洋は独特だった。3.3/50とかじゃなかったっけ。
電源のアブノーマルテスト
2025.02.10
ビビリなので一番やりたくないテストだった。

電源回路の全ての部品に対し、オープン・ショートをテストする。
全てにおいて、安全側になること。(たとえばヒューズが切れて電源が落ちて終わる)
当然、発煙とか発火はダメ。

オープンは、その部品を取り外した状態でテストする。

一番やりたくないのはショート。
この部品をショートしたら、こうなるに決まってる、って回路図上で容易に想像できる。

電源のプラス・マイナスをショートするのは言うまでもなく、MOSFETのゲートと電源プラス側をショートするなんて、やばいだろって思う。
実際MOSFETはショートモードで壊れるので、故障すると3本の足GDSが全部つながったようになる。そうした場合にゲートから制御ICへ電源電圧が直接かかるので、その対策としてたとえばツェナーダイオードがゲート側に組み込んである機種もある。

メインのスイッチングのMOSFETをショートするのを試した時は、リレー接点をつなぎ、そのリレーにリモコンをつけて遠くから操作した。
実際は「パチッ」と音が出てヒューズが飛び、それで終わったのであっけなかったけどな。
爆竹みたいに派手に・・・は無かった。

こんな苦心を思い出せば、ちうごく製のあやしい電源のおおらかさには、癒やされるような気がする。
そもそもヒューズない(笑) コストダウンの極みで、ノイズフィルタなんかバッサリ捨てて、原理的に必要な最低限の部品のみ、という割り切り方。
そりゃあ、燃えたりするだろうよ。

ノイズ規制は中国にも有るはずだが、共産党や指導者の悪口でも言わない限りは問題ないのだろう、たぶん。
スイッチング電源を自作
2025.02.10
これはずいぶん前になるけど、スイッチング電源を自作したことは何度かある。仕事でも趣味でも。

昔から、電源の自作と言ったらいわゆるリニア電源(でっかいトランスと、でっかい電解コンデンサと・・・そしてアツくなる)がほとんど。

スイッチング電源は、便利なICも有るけれど、パワートランジスタ1個程度でもできる回路は有る。

トランスは自分で巻いて作るけど、これを敬遠する人は多いかも?知らないけど。確かに面倒くさい。だけどやってみると面白い。面白くないって?
リニア電源のトランスみたいに1000回とか巻く必要はない。せいぜい数回から多くて100回巻ぐらい。
エナメル線とかウレタン線を巻く場合は、絶縁のためにバリアテープを貼ったりするけど、それが面倒なら三層絶縁線を使うと良い。
だけど太目だから、たくさん巻くとボビンに巻ききれなくなったこともある。

場合によっては層間に銅箔テープを巻いてシールドしたり、巻くといっても一周させてつないでしまうとコイルをショートしたのと同じだからダメで、端をつながないようにしてアースを引き出す。

巻き始めも気をつける必要がある。一次側と二次側の巻き方向も重要で、当たり前で基本的な事なのだが、うっかり逆に巻いてしまったら動かない。とりあえずトランスをリード線で浮かせて配線をクロスさせて動かしたことも。(位相が逆になるから動かない)

昔の職場に電源の巨匠がいて、彼は某大手メーカーで携帯電話の充電アダプタを設計してきた人のひとりだったのだが、退職してきた。たぶん会社の方針が変わったんだろう。ちうごくに全部投げれば良いとか、そんな話になったのかな。ひどい話で。

ものすごく安く買い叩かれる商品だが、これを作るには大変な努力が必要だったという。当然だけど安全規格が厳しい。ノイズ対策も。
それから、使っていく中でクレームもある。枕元で充電しながら使っていると、チーとか鳴ってうるさい。こういった事にも対処していったという。

脱線したが、

私の昔の職場では、しゃちょーが電源の内製化にこだわっていた。なぜか? 我々にしてみれば、買ってきた方が安いし安全に使える。手っ取り早い。商品を早く市場に出すには電源をゼロから作るなんてとんでもない。

それほど台数が出るわけでもないからコストダウンも難しい。当然これらの不利な点は説明したが、頭コンクリで全く聞いてくれない。自分が絶対だと凝り固まっているから、何を言っても無駄。

電源から作らなければ自社製品ではない、などとおかしな精神論で、このために遠回りとなった。そんな中で、たまたま求人でその巨匠が応募してきたので迎え入れたわけだ。

電源以外にも独自性が出せる部分はいくらでもあるというのに。そもそもユーザーは中身なんか関心ないだろ。

私が関わる前は、大学を出たばかりの経験の少ない者にやらせていたが、製品で問題を起こしていた。この件で、しゃちょーと、なぜか入社したばかりの自分も同行させられ、某大手の誰でも知ってる色々とっても厳しいところへ頭を下げに行かされたのであった。

先方も、私のことを「つい先日入社されたばかりなのに、」と気の毒がっていたが・・・

私が入る前、しゃちょーは若いやつに精神論を説き、きみはやればできるはずだ、と発破をかけていたようだが、それで完璧な物ができれば苦労はしない。かわいそうに。失敗すれば責められる。その繰り返しだったようだ。最後は、お前やめろって辞めさせられた。

指導者が必要という事で私が引きずりこまれたわけだが・・・電源なんか作るものじゃなくて、買うものでしょ、というのが当時の自分で、指導をしろといっても電源については当時ほとんど何も知らなかった。

電源なんて回路は単純そうに見えるが、じつはアナログでノウハウの塊で、安全規格やノイズなども含めて相当難しい技術なのだ。

その巨匠と一緒に、シールドルームでノイズ試験に取り組んだが、たとえば発熱とノイズの両方を良い方に満足させる事はできない。
たとえば、MOSFETのゲート波形をなまらせれば高調波ノイズは減るけど、発熱は増える。ノイズレベルを見ながら、その妥協点を探っていた。抵抗やコンデンサを取り替えては試しの繰り返し。
あれを変えればこちらも変えるで、どんだけ手間がかかるんだよというぐらい手間がかかっていた。デジタル回路やマイコンみたいに、動いたらそれで終わりじゃないんだよ。

おっと、長くなりましたのでこのへんで一旦終わり。
起動回路
2025.02.10
スイッチング電源の制御回路はどんな電源で動くかと言うと、何種類かあるけど、たとえばトランスの補助巻線から自分の電源を得て動いている。

しかしそれはスイッチングが始まらないと電圧が出てこないわけで、その最初はどうしているか。

AC電源を整流してそのプラス側から抵抗を通して、制御回路のICなどに電源が供給されている。これで最初の動きがスタートする。
以後は補助巻線から電源を得て動き続ける。

従って、この起動回路は最初だけ働く事になる。エンジンのセルモーターのようなもの。

電源は連続通電で働き続ける。定期点検で久しぶりに電源を落とす。再び電源を入れたが動かない。
これは、たとえば起動回路の電解コンデンサが干からびてしまっているのが原因だったりする。(干からびる: ドライアップ、容量抜け)

前に書いたように、最初だけ働く回路だから、以後おかしくなっても通常運転には影響しない。ところが、再びその出番が来た時にダメピョーンというわけ。

どこの何の製品かは書かないが、とある製品ではその起動回路の電解だけチップ形で、ほかはみんなラジアル品。
どういう意図でそこだけチップ形にしたのかはナゾ。
チップ形というと寿命が比較的短いような印象がある。昔からやっているが、あまり良い印象はない。液漏れしたのをせっせと交換していた経験ばかり。
邪推といいましょうか、意図的に寿命の短い部品を組み込んだのではないかという、そんな気がしています。

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