道具シリーズ(12) 溶剤
2022.05.22
汚れ落とし、とくに電子回路の場合はフラックス洗浄のために溶剤を使います。

溶剤としてよく使われるのはアルコールでしょう。ヘキサンなども使われます。(洗浄スプレーに入っている)

アルコールといっても何種類か有って、IPA(イソプロピルアルコール)は工場の洗浄槽に使っていました。一般に入手しやすいエタノールで十分かと思います。

これをクリーンポット、あるいはハンドラップと呼ばれる容器に入れておきます。上部をトントンと叩くと液体が出てきますので、これをキムワイプに染み込ませたりして利用します。

HOZANのクリーンポットは、最初に買った時、フタがプラスチック製でした。これは後で問題を起こしました。アルコールのせいでしょう、勝手にヒビが入って割れました。それで現在は金属製になっています。

綿棒、キムワイプ、歯ブラシ(使い古しで構わない)を揃えておくと良いでしょう。

綿棒は細かい部分の汚れを拭き取るのに使います。クリーンポットにちょんちょんと触れさせてアルコールを染ませて、それでICのピンなど細かいところをこすってきれいにします。

キムワイプは広い部分に対応します。1枚使うのはもったいない場合があり、ちぎって何分割かして使うこともあります。

基本的な注意として、火気厳禁、換気をよくしてから使うのは当然。

社会に出て最初の頃・・・あの頃は、まだフロンを使っていました。製造部に行って、空きペットボトルに分けてもらい、設計の実験室で使いました。
基板にドバドバかけ流しながらブラシでゴシゴシ。使い放題でした。いま思えば、なんと罪深いことでしょう。
すばらしく汚れ落ちが良かったし、すぐ乾くし、最高でした。

その在職中にフロンが規制され、使えなくなりました。新しい基板洗浄機では1槽目が炭化水素系、2槽目IPA、3槽目で乾燥といったものでした。
炭化水素系というのは、早い話が「灯油」のようなもので、灯油のニオイがプンプンしていました。
汚れ落ち(汚れとは主にフラックス)はフロンの時より劣り、これが原因でトラブルに巻き込まれた事もありました。いまいちきれいにならないというのが正直な感想でした。
トラブルというのは、ピンヘッダに汚れが残留、というか付着していた為に接触不良があり、短絡ソケットを差し込んでいるのに導通しないという現象に悩まされたのです。

当時、製造部門を見たら「フラックスリムーバー」というスプレーを使っていた。こりゃ便利そうだ。汚れ落ちも良い。
早速、物品手配の書類を書いて手に入れました。ところが、管理部門の人たちが一緒に来て、うるさい事を言うではありませんか。有毒だからマスクを付けろとか換気しろとか。

現在売られている同名のフラックスリムーバーとは成分が異なり、当時は二塩化メチレンだったのです。それは、アクリル接着に使われている溶剤そのものでした。
だからコネクタが融けたのでしょう! スプレーをかけると、なぜだか黒い液体が出てくるので、なんだろうと思っていた。フラックスにしては色が違うな~と。

黒い液体の正体は、コネクタの樹脂部分(黒い)が融けたものだったのです。





アクリル接着剤をうっかりこぼしてしまった時の写真。
キーボードの裏側がドロドロに融けてる!
道具シリーズ(11) 拡大鏡、顕微鏡
2022.05.22
拡大鏡、顕微鏡

若い頃は、拡大鏡なんか邪魔としか思ってなかった。肉眼で見えてるのに、なんで「わざわざ」拡大鏡を使えって言われるの?って。

当時20歳、若くて元気が有り余っていたナマイキなガキでした。

まだディップ部品(挿入実装部品)がメインだった頃です。チップは、まだ主流じゃなかった。

工場には簡易的なマウンター(自動実装機)しかなく、それも今から振り返ってみると動作が遅いもので、無いよりマシ程度ではなかったかと思います。
いまの主流のマウンターは、部品を置いていくところが見えないぐらい高速です。マルチヘッドだし・・・

当時のものは、プシッ、ウイーン、プシ、ウインウイン、・・・この「遅い」感じを文章でどう表現したらよいのかわかりませんが。
機械が1個つまんで(空気圧)、ウイーンと運び、基板上に置いていく(プシ)。プシというのはペプシじゃなくて、空気圧によって動いているわけ。

つまんで、と書いたけど実際には吸着ですね。吸って部品をノズルの先端にくっつけて、目的の場所に置く時には空気を吐き出す。

その装置はPC-9801VMで制御されていました。VMといっても、RXとかRAみたいな筐体だったのを記憶しています。VMといえばVX等と同様の昔の筐体だけだと思っていたけれど。Cバスにいくつか基板がささっていて、ケーブルがつながっていました。

当時作っていた基板は、チップは基板裏面のパスコンだけという基板も結構あって、それらはマウンターではなく、おばち・・・失礼、「年上の(きれいな)お姉さんたち」がピンセットで竹槍戦法・・・じゃなかった職人仕事をしていました。

要するに、ビンのフタにチップを取り分けて、ピンセットで1個ずつつまんで、クリームはんだ印刷済みの基板上の決められた場所においていく作業。

その作業を、我々(同期がいた)新人も経験させてもらったわけです。その時に、ライト付きの拡大鏡が有るから、それを使いなさいと。(内心: そのまま肉眼で見えてるのにいらないだろう、かえって邪魔)

それから幾十年! 拡大鏡、顕微鏡は欠かせなくなりました。(トホホ)

20代の頃でも、さすがにミクロの世界は肉眼では見えないので、「デンキのカホ」で買ってきたナショナルのライト付き顕微鏡を持っていました。これでEPROMの窓からのぞきこみ、あれっ、日立のROMなのに、ダイにはTIのマークが付いてるよ!という発見をしたりとか。
ROMライターを作っていたメーカーでしたから、そのことを先輩に聞いたところ、そういうのはよくあるらしいです。OEM供給でしょう。

後年、ニコンの実体顕微鏡の中古を見つけて買ったのでした。これは今でも愛用しています。愛用というか欠かせない。
もうひとつ、電気スタンドのような形の照明付きルーペ、これも顕微鏡ほどではない細かい作業には欠かせない。

若くて拡大鏡不要!と思っていても、自分のハンダ付けをルーペで拡大して細部をよく検討してみるとハンダ付けの上達につながるかもしれませんよ。
道具シリーズ(10) テスター
2022.05.21
テスター、これが無ければ始まりませんね。とにかく電気というものは、そのままでは見えないから、計測器は必要です。
何ボルトなのか、何アンペアなのか、何オームなのか、・・・これらは測定するしかありません。

最初に買ったテスターは、ラジオの製作に広告が出ていた「カイセ」のSK-310でした。広告の中に「通販できます」と書いてあり、現金書留だったと思うけど送金すれば現品を送ってくれました。
小学4年か5年頃だったかなあ。

私は大馬鹿者ですから、抵抗レンジでコンセントにつっこんでみたりとか実際にやってみたんです。それで最初に買ったテスターは、なんとなく焦げ臭いのです。抵抗の焼けた、あのニオイ、わかる方にはわかるでしょう。

Hfeの測定ができるのは良かったです。ジャンクのトランジスタの良否をみるのにも活用できました。

そのSK-310を、社会人になるまでずっと使っていました。その後も、デジタルと併用しながら、新しい同機種を買って現在も持っています。

デジタルテスターを買おうと思ったのは、ROMライターを自作した時でした。正確な電圧をはかる必要があると思ったからです。実際はそこまで厳密じゃないかもしれないけど、ROMライターなんて作るのは初めてのチャレンジだったし、うまくいかない時は何が悪いのかわからないから、不安要素をなくしたかった。

教習の待ち時間(次の教習はx時間あけた後とか)に、自作ROMライターの回路を検討していてノートに回路図を描いていました。

社会人になってから教習所の夜間コースに通っていて、会社が休みの土曜とか、場合によっては検定のために欠勤して平日の昼間から行ったこともありました。
専門学校を卒業する前に、教習所に通って運転免許をとろうとしたが、とにかく私は苦手ダメダメで、しかも担当教官がひどい人で精神的にも追い込まれました。全然覚えきれないしうまくならないし、補習ばっかりで2段階を終えるのも無理。挫折してしまい、行くのをやめてしまいました。
将来の路上教習が怖かったのです。浦上自動車学校から坂を降りて、あの車がビュンビュン行き交う道路に自分の運転で出ろって!? タヒねと言うようなものじゃないですか、と当時は真剣に悩んでいました。

結局、免許を取るどころか仮免にも到達できないまま就職し、社会人1年目にして、再び教習所の夜間コースに通うことになりました。(最初いやだって逃げたんですが、職場の方々に圧力をかけられ、拉致同然で教習所へ申込みに連れていかれたのです)
全く初めてではなかったにしても、卒業までギリギリ半年ぐらいかかりました。

夏休みなんか、教習所で知り合いになった人が2週間ぐらいで卒業してしまったのです。なんでそんなに覚えるのが早いのだろうと・・・

テスターの話から離れてしまいましたが、仮免3回、卒業検定7回でようやく卒業できた次第です。どれだけお金と時間を費やしたか。意地になっていました。お金を突っ込んで意地になってやれば何とかなるだろうと。

ところで、デジタルテスターを買ってよかったのは、細かい数字が読めるようになったことです。電圧などの変化を把握するには、アナログの針のほうがわかりやすいです。導通チェックもアナログの抵抗レンジが良いです。
デジタルだと、赤・黒をショートしてほぼゼロオームになるまで、パラリ、パラリ、パラリ、パッ、と間が空きます。アナログだったら針がピッとふれるので早く作業が進みます。

デジタルマルチメータというものがありますけど、テスターの高級版という認識です。一般のデジタルテスターだと電池が切れるので、つけっぱなしにできないけど、デジタルマルチメータ(DMM)はコンセント電源で動きますから。

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