道具シリーズ(13) ラッピングツール
2022.05.23
ラッピングツール

贈り物の箱とかリボンの意味じゃなくて、リード線を端子に巻き付ける接続方式のことです。
ハンダ付けより信頼性が高いと聞いた事があります。
ただ、現在ではほとんど用いられてないと思います。

電話交換機のリレー配線とか、アポロ宇宙船の誘導コンピュータもラッピング配線でした。(たとえばAPOLLO AGCで検索) APOLLO GUIDANCE COMPUTER
AGCは、ICを並べたモジュール同士を差し込むバックプレーンボードの裏側の配線がラッピング配線で埋め尽くされていました。

あと、大型コンピュータのバックプレーン配線もラッピングでした。私もミニコンNEAC3200とか、専門学校にあったNEC ACOS-250の中がそうなっているのを実際に見た事があります。

昔は山一電機のラッピングソケットが有りました。山一以外にも各社あったと思いますが、一般のソケットに比べたら高価でした。

私がリレー式電卓を作った時は、普通のピンヘッダを使いました。2列のもので、リレー端子1個から2本の配線が引き出せるようにしていました。これなら原理的に配線可能です。

日本メーカーだとエブレンのラッピングツールが有名でした。もう売ってないと思います。電動式と手動式があり、かつては両方とも所有していました。
個人的には、手動式で十分かと思います。
巻き付けと、取り外しができるようになっていました。1種類で、回す方向によって巻き付け・取り外し兼用の物を持っていました。
海外製のものは、確かOKインダストリーズ? それも持っていて、巻き付けと取り外しはそれぞれ反対側にあって、軸の真ん中にストリッパーがついていました。線を差し込んでひっかけてひっぱると、被覆がむけるという物です。

電動ツールの場合、ビットスリーブというものを先端に取り付けました。巻き付け専用です。もう少し高いものだと、CSWといって、カット・ストリップ・ラップの3つの機能を備えていました。
つまり、ラッピング線の被覆をあらかじめ剥く必要なく、そのままビットスリーブに差し込んで目的の端子に挿してボタンを押せば、自動的に被覆むきしながら巻き付けてくれるという便利なものでした。値段は、ちょっとの差じゃなかったね・・・格段に違いました。

諸先輩の話だと、お前そんなのすぐだめになるぞ、普通のビットスリーブになっちまうぞ、という事でした。興味はあったけど、買おうと思ったことはないし、買う金も当時はなかったのです。
道具シリーズ(12) 溶剤
2022.05.22
汚れ落とし、とくに電子回路の場合はフラックス洗浄のために溶剤を使います。

溶剤としてよく使われるのはアルコールでしょう。ヘキサンなども使われます。(洗浄スプレーに入っている)

アルコールといっても何種類か有って、IPA(イソプロピルアルコール)は工場の洗浄槽に使っていました。一般に入手しやすいエタノールで十分かと思います。

これをクリーンポット、あるいはハンドラップと呼ばれる容器に入れておきます。上部をトントンと叩くと液体が出てきますので、これをキムワイプに染み込ませたりして利用します。

HOZANのクリーンポットは、最初に買った時、フタがプラスチック製でした。これは後で問題を起こしました。アルコールのせいでしょう、勝手にヒビが入って割れました。それで現在は金属製になっています。

綿棒、キムワイプ、歯ブラシ(使い古しで構わない)を揃えておくと良いでしょう。

綿棒は細かい部分の汚れを拭き取るのに使います。クリーンポットにちょんちょんと触れさせてアルコールを染ませて、それでICのピンなど細かいところをこすってきれいにします。

キムワイプは広い部分に対応します。1枚使うのはもったいない場合があり、ちぎって何分割かして使うこともあります。

基本的な注意として、火気厳禁、換気をよくしてから使うのは当然。

社会に出て最初の頃・・・あの頃は、まだフロンを使っていました。製造部に行って、空きペットボトルに分けてもらい、設計の実験室で使いました。
基板にドバドバかけ流しながらブラシでゴシゴシ。使い放題でした。いま思えば、なんと罪深いことでしょう。
すばらしく汚れ落ちが良かったし、すぐ乾くし、最高でした。

その在職中にフロンが規制され、使えなくなりました。新しい基板洗浄機では1槽目が炭化水素系、2槽目IPA、3槽目で乾燥といったものでした。
炭化水素系というのは、早い話が「灯油」のようなもので、灯油のニオイがプンプンしていました。
汚れ落ち(汚れとは主にフラックス)はフロンの時より劣り、これが原因でトラブルに巻き込まれた事もありました。いまいちきれいにならないというのが正直な感想でした。
トラブルというのは、ピンヘッダに汚れが残留、というか付着していた為に接触不良があり、短絡ソケットを差し込んでいるのに導通しないという現象に悩まされたのです。

当時、製造部門を見たら「フラックスリムーバー」というスプレーを使っていた。こりゃ便利そうだ。汚れ落ちも良い。
早速、物品手配の書類を書いて手に入れました。ところが、管理部門の人たちが一緒に来て、うるさい事を言うではありませんか。有毒だからマスクを付けろとか換気しろとか。

現在売られている同名のフラックスリムーバーとは成分が異なり、当時は二塩化メチレンだったのです。それは、アクリル接着に使われている溶剤そのものでした。
だからコネクタが融けたのでしょう! スプレーをかけると、なぜだか黒い液体が出てくるので、なんだろうと思っていた。フラックスにしては色が違うな~と。

黒い液体の正体は、コネクタの樹脂部分(黒い)が融けたものだったのです。





アクリル接着剤をうっかりこぼしてしまった時の写真。
キーボードの裏側がドロドロに融けてる!
道具シリーズ(11) 拡大鏡、顕微鏡
2022.05.22
拡大鏡、顕微鏡

若い頃は、拡大鏡なんか邪魔としか思ってなかった。肉眼で見えてるのに、なんで「わざわざ」拡大鏡を使えって言われるの?って。

当時20歳、若くて元気が有り余っていたナマイキなガキでした。

まだディップ部品(挿入実装部品)がメインだった頃です。チップは、まだ主流じゃなかった。

工場には簡易的なマウンター(自動実装機)しかなく、それも今から振り返ってみると動作が遅いもので、無いよりマシ程度ではなかったかと思います。
いまの主流のマウンターは、部品を置いていくところが見えないぐらい高速です。マルチヘッドだし・・・

当時のものは、プシッ、ウイーン、プシ、ウインウイン、・・・この「遅い」感じを文章でどう表現したらよいのかわかりませんが。
機械が1個つまんで(空気圧)、ウイーンと運び、基板上に置いていく(プシ)。プシというのはペプシじゃなくて、空気圧によって動いているわけ。

つまんで、と書いたけど実際には吸着ですね。吸って部品をノズルの先端にくっつけて、目的の場所に置く時には空気を吐き出す。

その装置はPC-9801VMで制御されていました。VMといっても、RXとかRAみたいな筐体だったのを記憶しています。VMといえばVX等と同様の昔の筐体だけだと思っていたけれど。Cバスにいくつか基板がささっていて、ケーブルがつながっていました。

当時作っていた基板は、チップは基板裏面のパスコンだけという基板も結構あって、それらはマウンターではなく、おばち・・・失礼、「年上の(きれいな)お姉さんたち」がピンセットで竹槍戦法・・・じゃなかった職人仕事をしていました。

要するに、ビンのフタにチップを取り分けて、ピンセットで1個ずつつまんで、クリームはんだ印刷済みの基板上の決められた場所においていく作業。

その作業を、我々(同期がいた)新人も経験させてもらったわけです。その時に、ライト付きの拡大鏡が有るから、それを使いなさいと。(内心: そのまま肉眼で見えてるのにいらないだろう、かえって邪魔)

それから幾十年! 拡大鏡、顕微鏡は欠かせなくなりました。(トホホ)

20代の頃でも、さすがにミクロの世界は肉眼では見えないので、「デンキのカホ」で買ってきたナショナルのライト付き顕微鏡を持っていました。これでEPROMの窓からのぞきこみ、あれっ、日立のROMなのに、ダイにはTIのマークが付いてるよ!という発見をしたりとか。
ROMライターを作っていたメーカーでしたから、そのことを先輩に聞いたところ、そういうのはよくあるらしいです。OEM供給でしょう。

後年、ニコンの実体顕微鏡の中古を見つけて買ったのでした。これは今でも愛用しています。愛用というか欠かせない。
もうひとつ、電気スタンドのような形の照明付きルーペ、これも顕微鏡ほどではない細かい作業には欠かせない。

若くて拡大鏡不要!と思っていても、自分のハンダ付けをルーペで拡大して細部をよく検討してみるとハンダ付けの上達につながるかもしれませんよ。

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